ブログ2022/01/31
健康のためのデザイン
UIA(国際建築家連合)よりJIA(日本建築家協会)に「建築は社会や環境の変化にどのように貢献できるか?」というテーマで
UIA国際マニフェストリレー2023に応募しました。
6つのテーマより「健康のためのデザイン」を選択し、
「SDG’s 3.すべての人に健康と福祉を」に関連付けてマニフェストをまとめました。
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3.すべての人に健康と福祉を
人間の健康と幸せの感じ方は今も昔も変わらない。
心と感性と技術ですべての人に健康と福祉を
【マニフェスト】
1.すべての人に快適な温熱環境を
2.すべての人に適正な自然光と自然や社会とのつながりを
3.すべての人に良好な空気質を
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(WHO憲章 日本WHO協会訳)
福祉の意味は、国語辞典によると「さいわい、しあわせ、幸福」とあり、幸福は心が満たされて満足な状態と記述され、それは幸福と同じ意味をなすものと考えられる。
そして建築は何の役割を担っているかと問われると、様々な役割があるが、それらの役割も全て、人の為、社会の為、人々の健康と幸せの為に集約されるだろう。
建築が健康や幸せの為にできることは、地震や台風といった自然災害から身を護ることの他、温熱環境、適正な自然光、良好な空気質などの身体的に良好な室内環境をつくることである。
健康のためのデザインを考えるにあたり、先に述べたことの他に重要なことは自然や社会と繋がる安心感や建築の使いやすさや過ごしやすさ、空間の持っている雰囲気やデザイン性から得られる精神的満足感を与えることの他、周辺環境への配慮であると考える。
一見ごく当たり前のことのようではあるが、この当たり前のことを一つ一つ達成した上、柔軟に応用し進化させることが「すべての人に健康と福祉を」達成させる近道ではないだろうか。
考慮すべき3つの要素
人間の生理的メカニズムと温度の関係における健康要素と快適な温熱環境から得られる満足感や「人間は社会的動物である」とアリストテレスの言葉があるように、自然や人と関わること、自分が誰かの役に立つことで幸せを感じるということは今も昔も変わらない。ここでは3つの要素を取り上げる。
1.温熱環境の要素
WHO LARES Project2009の報告書では、居住者の健康に悪影響を与える住宅の諸条件の一つに「低温」と明記しており、低温の環境においては血流の不備による循環器系障害により65歳以上の死亡者は6~9月に比べ12月1月は約1.5倍に増えている調査結果も出ている。
快適な温熱環境は、肉体的、精神的に満足感を与え健康に寄与し、社会性や生産性も上がる基本的な環境要素である。
2.自然光の要素
快適な睡眠に影響を及ぼす要素の2大因子として温度の他に光があげられ、自然光は、朝起きて昼活動し夜眠るという、サーカディアンリズムの調整やメラトニン分泌に影響を与え、体温調節や睡眠をコントロールすることがわかっている。
自然光を取り入れる窓は、1日の時間や天候の変化、風、花や樹木など人間の本能的な自然と結びつきたい欲求を満たす要素と社会との結びつきを感じる要素になる。又、幼児期の自然との触れ合いは豊かな感受性の発達をうながす基本的な要素となる。
3.空気質の要素
室内環境における空気汚染物質として粒子状とガス状の2つに大別されるが花粉や化学物質、臭気などがあり、アレルギーを起こす要因や臭いによる不快感となる。人間の呼気や給湯器及び調理機器から発生する二酸化炭素は1.5%程度で軽度の代謝障害、8~10%では意識混濁をおこすとされ1000PPM以下に抑えることが推奨されている。良好な空気質で適正な湿度を保つことは精神的、活動的、健康的、免疫的にも必要な要素である。
【マニフェスト達成の為の手法】
1.すべての人に快適な温熱環境を・施設の利用時間や頻度など、実態に即した建築構造や断熱方法を決定する。
・外皮性能を高くして外部環境の影響を減らし、逃げる熱やコールドドラフトを極力減らす。
・床面・壁面・窓面・天井面の温度を室温に近い状態にする(温度ムラを無くす)
・夏は風を効果的に取り入れ、室内の熱をできるだけ排出しやすくする。
・夏の外気温が下がる夜間や早朝に建物に蓄えられた熱を排出し、冷房時間を減らす。
・全館空調を動力無しで、快適な環境に保つパッシブ換気システムと床下暖房の組み合わせをする。
・放射冷暖房による気流の無い室内環境をつくる。
・地域の気候、日照時間、風の特性を理解し、最善な開口部計画を選択する。
・日常生活活動に応じ、適切な自然光を取り入れ身体活動を促す。
・風景や自然環境を室内空間に取り込み、安心でき、心理的に満足できる室内環境をつくる。
・社会と繋げる部分を選択するなど周辺環境に配慮した開口部計画をする。
3.すべての人に良好な空気質を
・デマンド制御可能なパッシブ換気システムによる自然呼吸可能な建築をつくる。
・中間期自然換気やナイトパージ対応で開口部の開閉を制御し自然通風換気をする。
・大きく開放可能な窓の通風換気によりソーシャルディスタンスの閉塞感を視覚と感覚で和らげる。
・外気は花粉やPM2.5をフィルターで除去し高効率熱交換型換気により室温に近づけて給気する。
・給気、排気、給排気のゾーニングを明確にして気圧による汚染空気の拡散を防ぎ感染予防をする。